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コーポレートブランディングの視点があれば、経営はうまくいく。

あなたはコーポレートブランディングというものに対してどのような理解をされていますか?タスクが多すぎて、何から始めればいいかがわからないというのが正直な感想ではないでしょうか。コーポレートブランディングは、企業の未来を考えなければならないため、非常に複雑な取り組みになります。また商品のように具体的なモノが存在するわけではないため、様々な部署との関わりも必須となり、大きな企業であればあるほどリーダーの思いが大事になってきます。あなたにとってコーポレートブランディングとはなんでしょうか。

ブランディングには、大きく3つのステージがあります。それは、経営戦略としてのブランディング、マーケティング戦略としてのブランディング、コミュニケーション戦略としてのブランディングです。そのため、ロゴや封筒などのツールを刷新するためということであれば、コーポレートブランディングは上位概念であるため、経営戦略としてのブランディングから初めていただきたいと思います。ロゴや封筒などのブランディングはコミュニケーション戦略としてのブランディングであるため、上位概念が曖昧なままだとここでお伝えするコーポレートブランディングとの一貫性を欠いてしまいます。ぜひこのコーポレートブランディングを理解して、様々な戦略へと生かしていただきたいと思います。

コーポレートブランディングを共通理解にするために

コーポレートブランディングとは、その名の通り企業ブランディングのことです。企業をどのようなブランドに育てていくかを考えていきましょう。コーポレートブランディングとは、部署間を超えて、会社全体で取り組むべきものです。そのためには、組織全体でブランドとは何か、コーポレートブランディングとは何か、などの予備知識が備わっていなければ共通言語がないため強い組織にはなり得ないでしょう。

ブランディングには、コーポレートブランディング、商品ブランディング、採用ブランディングなど目指すゴールの違いによって様々な種類が存在します。そして、経営戦略におけるブランド戦略、マーケティング戦略におけるブランド戦略、コミュニケーション戦略におけるブランド戦略があり、認識にズレが生じてしまいがちです。そのため、ロゴを刷新することがコーポレートブランディングであるとか、BtoBのお仕事だからコーポレートブランディングは関係ないなどの誤った認識が前提にあると、ブランディング自体が困難となります。

ブランディングには、あやふやな部分がとても多く、人それぞれで異なる認識が生まれやすいとされます。そのため、コーポレートブランディングにおいても、これらの認識の違いを正しながら進めていく事が必要になります。あなたがコーポーレートブランディングのリーダー的存在であれば、これらのような障壁をぜひ乗り越えていただきたいと思います。単独ではコーポレートブランディングは不可能です。あなたの仲間やチームメンバーにコーポレートブランディングを正しく認識してもらい、あなたの良きサポーターにされてください。

コーポレートブランディングの定義

あなたの会社には、明確な会社のゴールは設定されているでしょうか。数値的なゴールは企業にとって目標であると考えられ、売上高、粗利益額、粗利益率、経常利益額などが社員に共有されていることと思います。では、あなたの会社の目的は何でしょうか。それは、年商〇〇とかですか?あなたの会社の目的は、会社の理念であると考えてみてください。

会社にとって理念とは金額で表現するものでなく、崇高な思いを言語化したものです。あなたの会社の目的は、誰かを幸せにしたいとか、こんな世の中に貢献したいとかであって、決して売上がいくらで、経常利益がいくらでという類のものではないはずです。それは、一方で顧客の立場から見れば、あなたの会社がいくらの売上を目指しているとかは、あまり関係のない話ですからね。むしろお金を稼ぐためだけに会社が存在すると思われてしまうと興味を持たれなくなってしまうでしょう。あなたの会社の存在意義が売上高とか経常利益とかに設定しているのであれば、顧客の立場からしてみればどうでもいいことに感じられます。

顧客や社会があなたの会社に関心を寄せるのは、あなたの会社が商品・サービスを通じてどのように社会に貢献して、どのような世の中を作っていきたいか、ということであり、その崇高な思いが全従業員と共有できていなければなりません。それは、言語化しただけで表現できるほど簡単なものではないことは、私も経営をしている立場として日々直面しています。

当社において、コーポレートブランディングはこのように定義しています。コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは、

企業の理念体系を明文化し、会社としての姿勢と行動を明確に示すことで、ステークホルダーから共感を得てファンにするための活動である。

企業の目的は、売上と利益の追求ではありません。人材や資本などの資源をどのように活用して、社会のお困りごとを解決していくか、そのことを明確に打ち出していくことが重要です。ここまでお読みいただければ、コーポレートブランディングが企業イメージを向上させる手技手法ではないことや、ロゴなどを刷新するだけでもなく、BtoBビジネスの会社にもコーポレートブランディングが必要であることはご理解いただけるでしょう。

コーポレートブランディングに期待できるメリット

ここからはコーポレートブランディングに期待できるメリットをお伝えします。コーポレートブランディングは会社の姿勢や行動そのものの変化が伴います。それは、時間と資本の投資が必要になるため、経営において成果が必要です。企業のブランド価値が数字で算出できる場合には、評価がしやすいかもしれませんが、そのための費用も莫大なコストが掛かるため、多くの中小企業は価値算出が困難と言えます。そこで、ここでは企業活動のなかで期待ができるメリットを共有します。

コーポレートブランディングに期待できるメリット:IR

IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)とは投資家に対して、経営状況や財務状況を発信する活動のことです。コーポレートブランディングでは、企業の存在意義や理念を明文化することで、会社に対する信頼性が高まることが期待できます。会社は社会の公器と言われ、正しく経営ができているか常に公に目にさらされています。

以前ライザップが負ののれんということで、非常にグレーな資金調達をしたことがありましたが、会社の本来のゴールと実際の行動に乖離があったことで、社会からの信頼を落としてしまいました。逆に、優れたコーポレートブランディングを実施できている会社は社会から信頼を得ることができるのです。皆さんは、不二製油という会社をご存知でしょうか。こちらは、2050年の食糧不足という社会問題に取り組むトップの高い志が実際の経営活動にあらわれており、大変素晴らしい会社です。投資家目線で言えば、そのような会社を応援したくなるものです。

コーポレートブランディングに期待できるメリット:人材の採用

企業が頭を悩ます大きなものに人材の採用という課題があります。日本には人はいます。しかし、企業で活躍できる人材が少ないというのは、ある経営者の言葉です。私も経営者として、人材の採用というものは非常に重要なものであると認識しています。しかし、多くの中小零細企業は、たくさんのお給料を支払って来てもらうということができないのが実態です。また人材の方から見れば、高いお給料は確かに魅力でしょう。ただし、人材は会社の考え方やビジョン、そして、どのような活躍の場があるかを見ています。そのため、会社と人材の価値観が今日でき、一緒に夢を実現できる仲間となれるかがお互いにとって大切なことなのです。コーポレートブランディングとは、まさに採用ブランディングの土台となるもので、会社の存在意義や一貫した姿勢や行動が人材を魅了することになり、採用に強い会社へと成長できるのです。

コーポレートブランディングに期待できるメリット:組織

あなたが会社においてブランディングを推進していくためには、社外へのブランディングだけではなく、社内へのブランディングも必要になるとお考えのはずです。社内へのブランディングのことをインナーブランディングとよび、会社の存在意義や一貫した姿勢を従業員に行動して貰う必要があります。ブランドとは、会社の中にも存在しますし、ステークホルダーの中にもそれぞれ存在します。そのため、会社のブランドとステークホルダーの思い描くブランドにはギャップがあります。それは、どんなに有名な企業においても、顧客の担当者が気に入らなければ、その会社のブランドが下がってしまいます。そのため従業員はブランドの体現者でなければならないのです。

従業員さんの立場からすれば、嫌々働くよりも会社のファンとなって働くほうが、自分のためでもあるし会社のためでもあるのです。だからこそ、従業員をプロフェッショナルとして行動して貰う必要があります。ところが会社の存在意義や姿勢が売上や利益目当ての会社であれば、従業員はお金のために働いてしまうのです。そのような従業員が自社に対する誇りを感じ、充実感を持って仕事に取り組み、顧客の幸福を実現できるでしょうか。答えはNOです。コーポレートブランディングとは、あらゆるブランディングの根幹となるものであり、その一貫した軸ができることで従業員を正しい方向へ導いていけるのです。

コーポレートブランディングに期待できるメリット:マーケティング

あなたの顧客がなぜあなたから商品を購入するのでしょうか。もし同じ機能と価格であれば、どこから買っても同じはずです。ところが、顧客は意識的にまた無意識的にお金の使い方というものを非常に大事にしています。せっかく購入するなら、あの人から買いたい、あの会社から買いたい、そう思ってもらうことがブランドが目指すゴールの1つです。逆の立場で考えると、お金儲けが目的の会社からあなたが購入するよりも、好きで憧れている会社から商品を購入することが多いはずです。

コーポレートブランディングとは、企業としての正しい姿勢を確立させ人材の行動を変容させるものです。その結果、会社が生き生きと躍動し始め輝きを持つのです。コーポレートブランディングに期待できるメリットとなるブランディングは、まさに社会の公器としての役割を果たし、多くの会社のお手本となるような行動を起こし、社会を引っ張っていく姿勢に人々は共感を覚えるのです。その結果、顧客が企業を応援してくれるようになり、事業が伸びていくのです。マーケティングとはテクニックだけではなく、その根本となる考え方が大事で、それこそがコーポレートマーケティングの狙いでもあるのです。

コーポレートブランディングとビジョン

あなたの会社が何のために存在するのかという問いは、すぐに答えを導くことができるほど簡単な問いではないかもしれません。そして、そのゴールは1つではなく、いくつものゴールが存在しさらに大きなゴールへとつながっているかもしれません。

昨今は企業の社会的責任(CSR)からさらに一歩進んで、事業を通じてどのように社会をより良くしていくかが問われている時代です。例えば、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な発展目標)は国連が2015年から提唱している取り組みで、社会貢献ではなく、事業を通じて社会課題を解決することを目指しています。そして、金融に関しては、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったESG投資の分野が注目されています。また、CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)はマイケル・ポーター博士が提唱する理論ですね。これら現代において、ビジネスには非常に高い社会性が求められています。

コーポレートブランディングには、非常に高い視座が必要です。あなたの会社がこれらの視座のもと高いビジョンと一貫性のある行動に取り組むことで、ステークホルダーからの理解と共感が得られ、従業員も会社で働くことを誇りに思えるはずです。

コーポレートブランディングの進め方

コーポレートブランディングの目的がとても大切であることがご理解いただけましたでしょうか。ここからは、コーポレートブランディングのステップをご紹介していきます。コーポレートブランディングは企業の経営理念にも大きく関与するため、その明文化というものは非常に困難で、社内への浸透についてもハードルが高いため、一般的なブランディングの書籍にはその手法が紹介されていません。また、そのタイミングもベストな時期というものが決めにくいこともあり、コーポレートブランディングが進まないことが多いとも聞きます。ここでは、コーポレートブランディングの具体的な進め方をお伝えしてきます。コーポレートブランディングの進め方は、

・コーポレートブランディングのタイミングを決める
・コーポレートブランディングのチーム組成
・コーポレートブランディングの現状を分析
・経営理念〜CIコーポレートアイデンティティを定める
・VIビジュアルアイデンティティを定める
・コーポレートブランドの規定を行う
・インナーブランディングを行う

概ねこのようなステップになりますが、都度前のステップに戻りながら整合性をとり一貫性を生み出していくことを意識していただきたいと思います。

コーポレートブランディングの進め方:コーポレートブランディングのタイミングを決める

コーポレートブランディングのタイミング:事業承継時

事業承継時には、経営者が次の代に引き継がれ、新たな方針を打ち出すことが多いのですが、そのようなタイミングにコーポレートブランディングを見直すきっかけが生まれます。コーポレートブランディングは、非常に大掛かりなことになるケースも有り、一気呵成に取り組むことが必要です。そのためにタイミングを見ることは大変重要で、事業承継時はうってつけのタイミングだと言えます。経営者が変わるときというのは、どうしても支持者層とそうでない層に分かれてしまいがちです。昔の経営者にはついていっていたが、今の経営者にはついていけないというケースもよくあります。そのようなときは、今一度あなたの会社が何のために存在するのかを振り返っていただき、何をすべきかを考え、全社で課題解決に取り組むべきだと思います。

コーポレートブランディングのタイミング:中長期経営方針発表時

中長期の5年、10年ビジョンを定めるときに、ブランドが見直されることがあります。昨今のように時代の変化が目まぐるしいときに、会社の存在意義を深く考え、原理原則を追求するきっかけが中長期経営方針発表会です。その発表を聞いた従業員がやる気になり、頑張ろうと思ってもらえるようにすることは、インナーブランディングの目指すところです。コーポレートブランディングは発表時だけのことではなく、そのプロセスにおいてさえも従業員を同じ方向へ向かせるための大事な取り組みになります。そのため、ブランドを考えた中長期経営方針か、ブランドを考えない中長期経営方針かを考えれば、自ずとコーポレートブランディングの重要性にお気づきになると思います。

コーポレートブランディングのタイミング:周年事業時

会社に10年単位、100年単位で節目が訪れる。会社が10年以上も続くのは、非常に稀なレベルであり、まして、20年、30年と続けば余計です。そのタイミングにコーポレートブランディングを行うケースは多い。それは、経営者にとっても、節目として新たなスタートをきりたいためでしょう。

コーポレートブランディングのタイミング:上場時

上場時に会社のブランディングが検討されるケースがあります。それは、ステークホルダーに対して、会社のビジョンを指し示すことがあるからです。上場時にどれだけ株価を上げられるかということもコーポレートブランディングが関与していると考えられます。コーポレートブランディングとは、ランドスケープ分析、事業計画、意思決定そのものであるからです。

コーポレートブランディングのタイミング:企業合併時

昨今はM&Aというものが非常に大きくなってきました。しかし、その後のPMI(Post marger integration)統合プロセスに関して言えば、なかなか多くの会社が苦労しています。文化も何もかも違う会社が一つになるのだからそれは大変なことだと思います。コーポレートブランディングでは、当社ではこのようなとき、言葉を合わせることから始めます。理念体系やブランドの中核概念が確立されているのであれば、何度もすり合わせを重ね、理解を深めていくことを推奨します。買った会社側が偉いのではなく、買われた会社が偉くないのではなく、夫婦のようにともに歩むために考え方を合わせていくことがとても大切なのです。

コーポレートブランディングのタイミング:業容拡大時

事業が成長してくると、当然人員が必要になることがあります。それも今まで文化が浅かった会社が人材獲得により、会社の仕組みもロイヤリティも醸成できていない状況であれば、しっかりと会社の姿勢や考え方を指し示さなければなりません。私も急な拡大をした結果、借り入れも増え、従業員が返済のために働かされ、疲弊していく様子を見てきました。業容の拡大は急激に行うケースがスタートアップ時には多いと思います。しかし、このようなときにこそ、コーポレートブランディングが大切になります。

コーポレートブランディングのタイミング:事業再生時

事業再生時とは、借り入れの債務を軽くしたり、人員が削減されたりとネガティブなニュースが会社に溢れてしまいがちです。コーポレートブランディングは、会社の未来を作り出すための前向きなアクションです。そのため、会社の機運をもう一度高めていきたいというときに、コーポレートランディングが必要になります。ぜひ残された社員さんが元気で幸福になるためにもおすすめしたいと思います。

コーポレートブランディングのタイミング:事業拡大時

会社の規模が大きくなると創業当初と比べ、会社の目指すゴールが異なってきます。そのような際には、会社が新しく目指す方向性を指し示すためにコーポレートブランディングに取り組むことがあります。ゴールを定めるためには、コーポレートブランディングを刷新することがあります。

コーポレートブランディングのタイミング:時代の変化時

時代の変化とともに、求められる表現も異なってきます。20年、30年と時間が立つと、会社の考え方を表現したVI:ビジュアルアイデンティティも時代の要性とともに変化が生まれ、その結果コーポレートブランディングを見直すことがあります。ユニクロがロゴマークを変更したことを憶えていらっしゃいますでしょうか。重たいイメージから軽やかなロゴマークになりました。そのように時代の変化とともに会社の新鮮さを伝えるためには、コーポレートブランディングの見直しが必要になることもあります。

コーポレートブランディングのタイミング:海外進出時

コーポレートブランディングを検討するタイミングとして、海外進出時が挙げられます。当社もニューヨークに会社がありますが、まさに外部環境が全く異なります。社名でさえも海外では、全く意味合いが異なります。当社はコミュニケーションエナジーニューヨークという会社を子会社にありますが、エネルギー関係のお仕事に間違われたことがよくあります。そのような際は、事前にコーポレートアイデンティティの見直しが必要であり、コーポレートブランディングも再検討するタイミングになると考えられます。

コーポレートブランディングのタイミング:採用時

コーポレートブランディングは、採用においても検討されることがあります。それは、会社の考え方を明確にしておかなければ、採用において十分にインパクトとメッセージが表現できないからです。コーポレートブランディングありきで、採用ブランディングです。会社としての考え方や戦略に一貫性と強さを持ち合わせていなければなりません。コーポレートブランディングは、根本的な会社の考え方やビジネス課題を解決するためのパワフルな手段です。その取組には、何かしらのタイミングで取り掛かることで、コーポレートブランディングを勢いづけることができます。

それぞれのタイミングは、一気呵成にコーポレートブランディングに取り組むきっかけになります。全社でコーポレートブランディングに取り組む勢いや機運と行ったものをぜひ味方につけてほしいと思います。

コーポレートブランディングの進め方:コーポレートブランディングのチーム組成

コーポレートブランディングで大事なことは、部門を超えた組織であるということです。チーム組成の進め方は以下のとおりです。

・プロジェクトチームを編成しましょう!
・プロジェクトキックオフを行いましょう!
・ノーミング・セッションを行いましょう!
・コーポレートブランディング勉強会を開催しましょう!

コーポレートブランディングのプロジェクトチームを編成しましょう!

コーポレートブランディングは、企業全体の取り組みとなります。そのため、組織を縦断したチームと横断したチームが連携しなければなりません。その交点になる方の役割が非常に重要なものになるので、ぜひ「任せること」ができる方を選定してください。その組織づくりが最も大切な一歩目になるため、どうぞその条件は参考にしてほしいと思います。

コーポレートブランディングに必要な人材とは?

コーポレートブランディングの前提として、大事なことは誰をチームに選出するかです。目指すべきことは、会社の部門代表ではなく、会社全体のことを考える人材を集めなければなりません。個人主義となる部分最適ではなく、会社という全体最適を目指すことを共有し理解するという条件がとても大切なのです。コーポレートブランディングは一夜にしてならず、であるためすぐに結論が出ないことがあります。そのようなときもじっくり腰を据えて、全体最適のために考え行動できる人材が関与すべきです。つまり、未来志向で前向きな姿勢でなければなりません。

コーポレートブランディングは、3年後や10年後を見据えた中長期的な展望を共有することが大事で、その高い視座を必要とします。また、チームに選出した人材も一緒に経営に参画するくらいの前向きに問題意識を持っている人材が関与したほうがいいです。このプロジェクト自体が会社の命運を握るものであり、そこに責任感をもって取り組んでほしいというメッセージを個々がしっかりと受け取ってくれると強いコーポレートブランドに仕上がります。

コーポレートブランドを創るのは、人でしかありません。

そこには調整能力に加えて、強い思いや会社への愛着心をもって関与する人々でなければ、コーポレートブランディングの中核が揺らぐことになり、結果それ以下のすべてのブランディングは機能しなくなります。コーポレートブランディングに関与する人材の選択は決して簡単ではありません。今後の会社を背負うであろう期待の人材が成長する機会でもあるため、ぜひとも人選にはこだわってほしいと思います。

創造は混沌から生まれます。その混沌の中に共に進んでいく人材は、仲良しグループではないかもしれません。しかし、腹の底から信じ合える同志になっていくことで、コーポレートブランディングの本来の目的である、強い組織を創るということが実現に向かって走り出していきます。主体性を持って、会社の未来を担う人材、そして、喧々諤々というプロセスがありながらも、お互いを尊重し信じ合える仲間をつくるというこの活動こそがコーポレートブランディングの手法であり目的でもあります。

コーポレートブランディングのプロジェクトチームを編成しましょう!

中小企業は、ある程度人材の能力に目が届きますので、経営者層プラス将来的に成長を期待する人材を招集することが望ましいでしょう。しかし、私の経験では、コーポレートブランディングに自ら名乗りを上げてプロジェクトメンバーになる方は非常にまれで、そのような方はほとんどいません。だからこそ、大手も中小企業も、このような機会は会社の今後の中核を確定させる最も重要なプロジェクトであることをしっかりと理解をしてもらい、人選することが求められます。

よほどレベルの高い企業であれば別ですが、勉強したくないという人材が大半を占める企業においては、活躍する場を経営者層が準備していくことのほうが結果うまく行きます。まず、コーポレートブランディングって何?という方がほとんどですし、主体的・積極的という人材は本当に少ない中で、コーポレートブランディングに至るまでの社内の盛り上がりの醸成がどこまで作り出せるかがコーポレートブランディングの責任者の腕の見せ所といっても過言ではありません。大事なことは、「人材を育てる人材を育成する」ことです。この次の人材を育てる人材こそがコーポレートブランディングが末端の枝葉となっている従業員にコーポレートブランディングを浸透させていくわけですので、能力が高いだけではなく、将来の人材を育てることができるかどうかという点もコーポレートブランディングの人選には求められます。

コーポレートブランディングのプロジェクトキックオフを行いましょう!

大事なプロジェクトメンバーの人選の次は、全員でコーポレートブランディングのスタートを切ります。その進め方の一例として以下が挙げられます。

・司会者によるアイスブレイク
・プロジェクトオーナーの挨拶(決意表明)
・コーポレートブランディングの狙いとゴール設定
・プロジェクト参加者の自己紹介を兼ねた決意表明
・コーポレートブランディングためのワークショップ
・ゴールへのタスクとスケジュールの整理
・コーポレートブランディングのための各部門体制づくり
・情報共有のための仕組みづくり
・スケジュールの見える化
・懇親会/コンパの開催

これらの内容がコーポレートブランディングのプロジェクト会議では議論になる内容です。このキックオフミーティングの目的は、プロジェクトメンバーの意思統一です。全員が自主的に関わることが最も大切であり、そのためにメンバーをモチベートすることをプロジェクトリーダーの役割になります。そして、結束を高めるために、懇親会/コンパの開催もおすすめします。ただの飲み会ではなく、決起集会としてのそれぞれの腹をみんなで共有することが重要です。

コーポレートブランディングのノーミング・セッションを行いましょう!

チームビルディングに欠かせない理論としてタックマンモデルというものがあります。タックマンモデルは、成果を上げるチームを創るための5段階のステージで、組織形成やチームワークに関することで、最も重要な理論とされています。

・形成期/Forming(フォーミング)
・混乱期/Storming(ストーミング)
・統一期/Norming(ノーミング)
・機能期/Performing(パフォーミング)
・散会期/Adjourning(アジャーニング)

ノーミングセッションでは、

・このプロジェクトを行う必要性
・何を達成するのか
・どのように進めていくのか
・このメンバーが集っている理由

などを共有しながら、

・各自の強みや弱み
・嗜好/好きなこと嫌いなこと
・パフォーマンスを高めることと興味のないこと
・プロジェクトに対する懸念や不安
・どんなプロジェクトにするかという抱負
・メンバーへの期待
・気になっていること

これらをお互いにぶつけて話し合います。このタイミングで、腹を割って話をする仲間を形成していきます。

コーポレートブランディング勉強会を開催しましょう!

コーポレートブランディングの最も目指すべきことは、「育てることができる人材を育てること」です。勉強会というと毛嫌いされる方も多い中、企業の命運を握るブランディングの中で、人材を育てる事ができる人を増やすことができなければ、会社の中核概念は浸透しません。そのため、まずは、従業員の足並みをそろえるために、「コーポレートブランディングとは」という共通体験の場を作り出します。

その場で従業員に「コーポレートブランディングとは」「コーポレートブランディングの意義目的」などをインプットしてもらいます。そして、どれだけ重要なプロジェクトであり、深く広く伝えていくべきものかということを共有していきます。コーポレートブランディングを進めながら、経営者や経営幹部は、従業員のロイヤリティの醸成を考えることが重要になります。当社のような立場の外部ブレーンがサポートすることもできますが、大事なことはコーポレートブランディングを通じて、経営者や経営幹部が人材の働きがいやモチベーションを高めつつ、会社のことを大事に思ってもらうことに努めなければなりません。

コーポレートブランディングの現状を分析

さて、ここからは、具体的にコーポレートブランディングの取り組みに入っていきますが、その前提となるコーポレートブランディングの現状の取り組みを整理していきましょう。

・現状把握(社内資料の収集と社内取組などの情報整理)
・インタビュー(経営者またはブランドマネージャー)
・インタビュー(経営幹部、従業員)
・インタビュー(顧客、ステークホルダー)

コーポレートブランドの現状調査:現状把握(社内資料の収集と社内取組などの情報整理)

第一に取り組むべきことは、今までの会社の取組や社内資料を包括的に理解することです。

①企業関連の資料
・会社案内
・アニュアルレポート
・CSRレポート
・ディスクロージャー資料/IR情報
・社内報
・社史
・プレスクリッピング
・経営トップの発言録・インタビュー記事等
・各事業ごとのクレデンシャル資料
・出版物

②市場、外部環境、ブランド関連の資料
・マーケティングリサーチ資料
・ブランド調査資料
・市場動向資料
・ブランドブック
・VIマニュアル
・広告表現
・ほか

コーポレートブランディングに取り組むに当たり、現在の立ち位置を明確にしておかなければなりません。コーポレートブランディングのプロジェクトチームは、各方面から収集した人材ではありますが、会社のことを隅々理解しているわけではありません。そのためコーポレートブランディングという手段を選んでいるわけなのですが、この現状の整理だけでも会社の根本的な思想に触れることになるため、会社を物語る資料というものは必要不可欠になります。

コーポレートブランドの現状調査:インタビュー(経営者またはブランドマネージャー)

コーポレートブランディングにおいて、現状把握だけでも随分と情報が蓄えられたことと思います。その上でインタビューを行います。そしてトップがビジョンをどれだけ高く持っているかも引き出す必要があります。そのためには質問力が必要です。前段階として、トップや会社の考え方については、予習できているはずですので、トップが何を目指しているかということをトップの口から発言してもらうことで、確認を取っていきます。

私は、質問力で深く考えを引き出すことに注力しています。トップは日頃からあれこれと考えている方ばかりだと思います。コーポレートブランディングに取り組むということも予備知識があってのことです。そのため、この先10年、30年、100年とどのような会社であるべきかをぜひディスカッション重ねて欲しいと思います。そして、もう一つ大事なことは、意思決定者を決めておくことです。コーポレートブランディングの延長線上には、コミュニケーションの領域にも関与してきます。その際にトップの意思とズレが出てしまうと、収拾がつかなくなります。この段階で信頼関係を築き、意思決定者を明確にしておきましょう。

コーポレートブランドの現状調査:インタビュー(経営幹部、従業員)

コーポレートブランディングとは、明文化したものやロゴなどのカタチのことではありません。コーポレートブランドを社内、社外に理解浸透させるための活動です。そのためじっくりと腰を据えて取り組んでいただきたいと思いますが、大事なことは経営幹部や従業員が現在どのように会社の考えや取組をどのように捉えているかを知ることです。会社に対しての愛着心はいかがでしょうか。どのような考え方や姿勢で仕事に取り組んでいるでしょうか。

コーポレートブランディングとは、会社の目指す方向へ全社一丸となることがゴールであるとと考えます。会社と従業員の間に、考え方と行動にどれほどのギャップがあるか、そしてどのようにそのギャップを埋めていくべきかを考えていかなければなりません。コーポレートブランディングは、そのような狙いも含まれているため、決して考え方を明文化すれば終わりというものではありません。社内がコーポレートブランディングに向かって、行動に変えていく、そして、人間的な成長も考えながら取り組んでいくものだと考えます。従業員さんの成長ステージはそれぞれ異なります。だからこそ1つのチームとして一人ひとりの成長をコーポレートブランディングという手段で実現していくことが求められます。

コーポレートブランドの現状調査:インタビュー(顧客、ステークホルダー)

コーポレートブランディングの現状調査には、顧客やステークホルダーの方にもインタビューをできるだけ集めてみましょう。率直な意見を集めてみてください。コーポレートブランディングの現状を知るためだけではなく、消費者が感じているブランドのイメージをきちんと理解することが大事です。あなたがお思い描いているブランドと顧客が感じるブランドイメージはどのようなギャップがあるのでしょうか。

顧客やステークホルダーの意見が必要なのは、あなたのブランドは人が中心であるからです。社外の方があなたのブランドのユーザーとして必要とするか、利便性はどうか、手に取りやすいかどうかなど細かく見ていくと認識しておかなければならないポイントはいくつかあります。相手が人ということは、ニーズが満たされればいいのではなく、金額や購入場所、サイズや容量、形、ストーリー、雰囲気に至るまでありとあらゆるところに意識が向くはずです。つまりこのインタビューでどれだけの情報を引き出すことができるかで、あなたのブランドの軸が決まり、あるべきコーポレートブランドの姿に影響を及ぼします。

コーポレートブランディングの進め方:経営理念〜CIコーポレートアイデンティティを定める

コーポレートアイデンティティ/CIは、企業文化を構築し、アイデンティティや文化、独自性をイメージやデザイン、またわかりやすいメッセージで発信し、顧客を始めとした広い社会と共有することで存在価値を高めていく戦略です。コーポレートアイデンティティは3つのアイデンティティに分けられます。

MI:マインド・アイデンティティ:理念の統一
BI:ビヘイビア・アイデンティティ:行動の統一
VI:ビジュアル・アイデンティティ:視覚の統一

マインドアイデンティティとは、経営理念の浸透を意味します。経営理念開発には、コーポレート・フィロソフィ(企業理念)、コーポレート・ステートメント、コーポレート・スローガン、コーポレート・メッセージを明文化していきます。ビヘイビアアイデンティティとは、顧客への態度や振る舞いのアイデンティティであり、経営理念をどのように行動に置き換えていくかというものになります。その人の行動というものは、その人の考え方に左右されます。つまり、ニューロロジカルレベルにおける、能力と行動と環境に影響を与えるものです。

そしてビジュアルアイデンティティにはデザイン開発が伴います。デザイン開発とは、企業またはブランドマーク、企業またはブランドロゴ、ロゴタイプ (英文・和文)、コーポレート・メッセージなどのロゴ化、コーポレート・カラー、使用規定などがあります。ビジュアルアイデンティティ/VIはもう少し詳しくお話してみたいと思います。

コーポレートブランディングの進め方:ビジュアルアイデンティティ/VIを定める

ビジュアルアイデンティティ/VIとは、コミュニケーション戦略における、顧客との関係性を構築していくための視覚的なアプローチです。コーポレートアイデンティティ/CIでは企業が存在する意義目的であることはお伝えしたとおりですが、非常にコンセプチュアルであり、また言語の形式であることが多いため、認識の整合性を取ることが必ず必要になります。そのため、ビジュアルアイデンティティは、その意義目的を想起させやすくするためのトリガーとして機能します。

特に五感における視覚からの情報獲得は優位性が高いとされているため、ブランドは視覚的に統一感をもたせることで、記憶に留めやすくさせイメージを想起させることを目指しています。ビジュアルアイデンティティ/VIに関しては、見た目の美しさという機能面がとても重要視されるため、いわゆるセンスというものが顧客にダイレクトに伝わるものになります。そのため、デザイナーは特殊な技術を駆使して、ブランドの考え方をロゴマークやパッケージといったものに形作ることによって、ブランドのアイデンティティを表現します。このデザインを開発するプロセスは、非常に大事であるため、デザイナーの選択には力を入れてほしいですし、一緒に作り上げていって欲しいと思います。

ビジュアルアイデンティティ/VI:ブランドシンボルの開発

ブランドシンボルを分解すると以下の3つに大きく分けることが出来ます。

・スローガン
・ロゴマーク・ロゴタイプ

1つ目のスローガンというものは、企業名とタグラインで表現されます。「Inspire the Next 日立」や「水と生きる サントリー」など、会社の姿勢を簡潔にしっかりとイメージさせられることができる標語やモットーのことです。それはコーポレートアイデンティティを表現しており、とてもパワフルに一般消費者や顧客の記憶にしっかりと残すことが出来ます。スローガンとは元々戦場で使われたという起源をもちます。ブランドにとっては鬨(とき)の声という風に考えると感覚的に理解できると思います。「勝鬨を上げろ!」というのは、勝ったときに一斉に挙げる喜びの声「おーっ!」といったものだと思いますが、ブランドにおけるスローガンも同様に、その短い言葉で仲間を奮い立たせステークホルダーを巻き込むものだと考えられます。

2つ目のロゴマーク・ロゴタイプは、普遍的な美しさと完成度の高さを追求して欲しいと思います。こちらもコーポレートアイデンティティを表現しているものでなければなりません。普遍的であるということは、時代の流れに左右されず、根本的な意味合い含んでいるということです。なぜその造形なのか、なぜその配色なのか、これらを従業員が理解することそのものも社内ブランディングの1つの大事なポイントになります。

ビジュアルアイデンティティ/VI:ブランドシンボルの活用

ブランドシンボルというものは、好き嫌いだけで選ぶよりも、意味をしっかりと持たせることが大切です。その意味がきちんと社内に理解されていれば、さまざまな印刷物やツールで活用した際にも会社の考え方が表現されたものになります。また同時にビジュアル的なクオリティは追求しておくべきだと思います。その上で、名刺や会社案内などの印刷物、インテリア、ウェブサイト、社用車などに活用されていきます。ブランドシンボルは、言語的なネイティブの確認をおすすめします。例えば、ポカリスウェットは、汗という単語が入っているため、飲み物として英語圏での販売に相当苦労したと聞きます。そのため、英語のブランド名が入る場合は、きちんと現地の人チェックを行いましょう。また、東京オリンピックのように商標が訴えられるという出来事の起こらないように商標のチェックも忘れずに。

コーポレートブランディングの進め方:コーポレートブランディングの世界観の基盤となるルール作りを行う

あなたはブランディングに一貫性が求められる理由はご存知ですか?詳しくは、ブランド連想のページに詳しく説明しているので、そちらをご覧いただきたいと思います。

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ブランド連想

コーポレートブランディングにおいてその一貫性が保たれていないということは、ターゲットに対して期待を裏切らないということです。自分が大好きなブランドはこんなにすごいの!と消費者は潜在的にも顕在的にも誇らしく思っています。その期待を裏切らないということは、信頼性や誠実さが企業活動に求められるということです。その上で、顧客とのコミュニケーションとなるビジュアルアイデンティティ/VIにもクオリティや一貫性をもたせることで、ターゲットの期待を裏切らないメッセージとなります。コーポレートブランディングにおいて一貫性を持たせるための手順をご紹介します。

・ビジュアルアイデンティティのデザインシステムの開発
・デザイン展開案事例を開発
・ビジュアルアイデンティティマニュアル(規格書)の制作

となります。

コーポレートブランディングにおいて一貫性を持たせるための手順

ビジュアルアイデンティティのデザインシステムの開発

デザインシステムとは、デザインの原則、配色、概念など、デザインに関するあらゆるルールを定めたものです。デザインシステムを作っておくことで、さまざまなデザイナーやクリエイターが関与する事になったときの指針となる機能をもちます。コーポレートブランディングは時間がかかることなので、その経過において、デザイナーが変わったりすると全くデザインが変わってしまうこともあります。そのため、長期的なプロジェクトになればなるほど、最初の段階で少しづつでもいいので、デザインシステムを作っていくことは重要なポイントです。

デザイン展開案事例を開発

そして、デザインシステムを開発後、さまざまな適用事例が出てくると思います。そのときに、サンプルとしての機能をもたせることで、他のメンバーに対しての理解度を高めることが出来ます。デザインシステムの適用場所は、名刺1つから始まり、封筒、ステーショナリー、看板、パッケージなど様々な事例が生まれると思います。その事例を適用サンプルとして積み上げていくことで、全体の統一感を図るとともに、社内におけるルールの機能をもたせることができます。

ビジュアルアイデンティティマニュアル(規格書)の制作

これらのデザインシステムと展開案事例を1つのマニュアルとしてファイリングします。コーポレートブランディングにおいては、ロゴやスローガンがどのような使われ方をしているかだけではなく、その適用方法もルール化しておくことで、コーポレートブランディングの枠組みを明確にすることができます。コーポレートアイデンティティを従業員と共有するということは、企業としての考え方や思想というものを様々なカタチを通じて伝えなければなりません。ビジュアルアイデンティティマニュアルとは、そのための確かなツールになります。そして、言葉でもその補足の説明を明記していくことが大切です。コーポレートブランディングとは、まさに会社の理念や考え方を広げていく活動であるため、そのための手段として、ビジュアルアイデンティティマニュアル(規格書)の制作をおすすめしたいと思います。

コーポレートブランディングの進め方:インナーブランディングを行う

ブランディングには2種類あります。それは、社内向けか社外向けです。社外向けはアウターブランディングと呼ばれ、社内向けをインターブランディングと呼びます。コーポレートブランディングの最重要の資源は人です。従業員が会社の考え方や方向性に共感し誇りに感じることが出来なければ、コーポレートブランディングは実現しにくいのです。従業員が会社の考え方や方向性を理解し、前向きに行動するためには従業員さんにも腹落ちしてもらわなければなりません。そのためのステップは、以下となります。

・会社が従業員の現状の考え方と姿勢の状態を理解する。
・会社と従業員の考え方の共有を図る。
・従業員の主体性を導き、行動へと促す。
・社風、文化へと積み上げていく。

会社が従業員の現状の考え方と姿勢の状態を理解する。

インナーブランディングに取り組むといっても従業員の協力は欠かせません。従業員と経営者層のコーポレートブランドに対する意識の差を小さくすることが将来的に必要になるため、この段階で行うことは従業員のブランドに対する考え方や姿勢の現状を理解するということです。この段階では、じ全アンケートと直接インタビューなどで、客観的に広く情報を収集することが求められます。日本人は音が真面目な人が多いので、本当は会社への愛着心をもっと持ちたいと考える方が多いと思います。だからこそ彼らのホンネを引き出し、会社に言われるから取り組むのではなく、自主性や主体性というものを引き出すことも意識しつつ、現状をフラットに理解することが必要です。コーポレートブランディングはこれらの一つ一つの積み重ねの上に成り立っています。そのため、従業員のコーポレートブランディングの意識を醸成するためにも、まずはじっくりと話を聞いてみていただきたいと思います。

会社と従業員の考え方の共有を図る。

この共有ということは会社の規模が大きくなればなるほど難しくなりますので、じっくり時間をかけて取り組んでいきましょう。ここでは、ワークショップやアクティブラーニングといったやり方で同じ場を共有します。人それぞれ納得の仕方が違うので、上役から教え込むというよりは、ともに学ぶ姿勢が大事です。楽しく学び、会社への忠誠心を高め、やる気を引き出すことをゴールに据えて取り組んでみましょう。コーポレートブランディングは全従業員での取組が必要なので、現場の従業員がますますやる気に頑張れるようにモチベートしていきましょう。

従業員の主体性を導き、行動へと促す。

コーポレートブランディングは会社全体的に主体性を持つことが必須です。それは、意思を持ってブランドを創るためには、人が変わらなければならないからです。上からの指示だからということで、表面的にブランドを理解するだけでは、コーポレートブランディングは成就しません。一人ひとりの意識を変えて、行動を変えていくためには、上からの指示で現場がコントロールされるのであれば、いずれまた元の木阿弥となってしまいます。あなたのコーポレートブランディングの目的は、様々な複数あるはずです。コーポレートブランディングは人のなせる技です。一人ひとりの主体性を高めることを目指し、さらに実践を促すことを意識的に取り組まなければなりません。

社風、文化へと積み上げていく。

コーポレートブランディングのゴールはその会社の「らしさ」を定義づけて、行動を変容していくことです。その人材の行動の変容こそが、コーポレートブランディングの産物であり、会社のアイデンティティの体現となっていきます。社風という曖昧な言葉で会社の「らしさ」が定義されるというのは間違いで、人・商品・サービス・空間などによって社風は形成されていくため、その規格となるコーポレートブランドが重要となります。そして、従業員の行動の変容がどのように人事評価に繋がるかということもあるため、複数の部署を跨って文化へと育てていかなければなりません。現場への落とし込みということが非常に重要であるため、時間を要することがありますが、こちらもぜひチャレンジして欲しいと思います。

コーポレートブランディングの事例

ユニクロのコーポレートブランディング

ユニクロ

2018年ユニクロの連結売上は2兆円を超えました。ますます加速するユニクロの快進撃。しかし、ユニクロを来ていることがダサいという時代があったことをご存知でしょうか?1998年のフリースブームにより、多くの方がユニクロのフリースを手にしました。しかし「人とかぶると嫌」など結局はユニクロの安くてダサいというイメージが拭い去られたわけではありませんでした。

そこで、そのイメージ刷新に取り組んだのが佐藤可士和。リーズナブルで質が良くておしゃれなイメージを目指すことを決断します。柳井さんは、服に興味がない人があーゲットで、世界中の誰もが着られる普段着=ライフウェアという市場を創造し始めました。

その軸を佐藤さんがビジュアルアイデンティティと会社の方向性をデザインしていったというわけです。そのビジュアルアイデンティティの向上で見事にユニクロのブランドイメージが刷新されたことは記憶にあることと思います。そして、現在は巨大な会社として君臨し、消費者は気がつけばユニクロを着ているという状況になりました。

ユニクロはとても柔軟な考え方をしていると思います。ファッション感度の常識も変えました。2009年にジル・サンダーと組んで「プラスジェイ(+J)」を発売。そしてクリストフ・ルメール、ジョナサン・アンダーソンら世界のトップデザイナーと協業してファッション業界を驚かせました。UTというティシャツの展開もディズニーやマーベルと組んだり、自社に足りないブランド力を他のブランドを活用することで、新たなファンの取組も行ってきました。足りない部分は他力を得るという会社の戦術は見事だと思います。

自社の強みがターゲットからどう思われているか。ユニクロの場合は、安い商品を提供したいと思っていた所、安いからダサいという顧客のブランドイメージが作り上げられてしまいました。その現状をどう変えていくか、どう変えていきたいと心に思うかがリブランディングの第一歩だと考えます。

サントリーのコーポレートブランディング

サントリーは多くの方々に知られている飲料メーカーですね。圧倒的な商品数とプロモーションにより、必ず毎日どこかで目にしている気がします。そのサントリーは「水と生きる」という会社としての約束事を明言しています。口に入れるものとして、ピュアで透明性のある企業イメージをこの一言で表現しています。

そして商品だけではなく、その源である自然と地球環境への貢献を行っています。この考え抜かれた理念体系とガバナンス、そして活動までサントリーという会社からは高い意識を感じます。

昨今、SDGsという国連が掲げた方針に対しても、サントリーは水というものを最重要課題として取り組むことを宣言しました。会社のあり方と透明性が問われている中で、企業は考えと行動を明らかにしていかなければなりません。その姿勢があるからこそ、会社に利益をもたらし、ステークホルダーを幸福に出来るのではないでしょうか。

ダイソンのコーポレートブランディング

ダイソン

「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」と聞けば、みなさのわかりだと思います。そう、ダイソンですねブランディングが非常に長けた会社です。そんなダイソンですが、実は技術集団だと言われています。

イギリスにある本社の従業員8000人のうち3分の1はエンジニアか科学者であり、2015年度売上高研究開発費比率は約12%であり、日本の同様のメーカーと比較しても随分と多いそうです。会社を経営するダイソン氏自身がチーフエンジニアのため、技術開発に対して潤沢に、柔軟に投資をすることができています。

元々はコードレスクリーナーを販売していました。が、最近は照明だったり、空気清浄機だったり、ドライヤーだったりと商品ラインを拡大しています。

ダイソンは本当に吸引力が変わらないのでしょうか?個人的な見解ですが、実はダイソンの掃除機は壊れやすいと感じます。2年ほど使っていると、モーターがおかしくなり、掃除ができなくなりました。またデザインは本当に機能的でしょうか?あの凸凹している形のためでしょうか、結構重量もあります。

日本のコードレスクリーナーのメーカーはどこがブランディングに成功しているでしょうか。ここがダイソンが上手なところです。モーターはおかしくなる、重量もある、重電も遅いなど、吸引力以外は本当にイメージが良くありません(個人的見解)。

なのに売れている。これがブランディングの力ですね。自社製品の強いところをとにかく謳い続ける。「吸引力が変わらないただひとつの掃除機」というこのフレーズの強さだけで、ターゲットに印象づけているわけです。

またデザインがいいという意見もあるかもしれません。しかし、見た目のデザインは人の好みです。日本は無駄をなくしたシャープなデザインが多いと思います。それはあらゆるジャンルに於いて。そこに普段目にしないフォルムの掃除機が格好良くテレビに表示されることで、また手にとった時にかっこいいと思わされたことによって、購入してしまうわけです。

ただ使ってみるとやはりメード・イン・ジャパンには勝てないと感じますが、ブランディングの良し悪しで消費者の購買は影響を受けます。今回は主にエクスターナルにおいてのブランディングを考えてみましたが、いかがだったでしょうか。

コーポレートブランディングのまとめ

いかがだったでしょうか。コーポレートブランディングは、企業にとってどれだけ大事な取組であるかがご理解いただけましたでしょうか?コーポレートブランディングは、まさに経営であると言いかえることができると私は考えています。全ての戦略に影響を与えるものであり、ミッションやビジョンなどの理念体系や現場の従業員の行動に及ぶまで全ての場面に影響を及ぼすものと言えます。また、加えて重要なことは、顧客視点が必ず付随しているということです。コーポレートブランディングとは、企業のためだけではなく、どのように顧客に理解を持ってもらうかも同時に考えているということが、ブランディングの最も大切な視点と言えます。社風や社歴といったアイデンティティも顧客にどのように写っているでしょうか。ぜひ考えてみてください。コーポレートブランディングは企業にとって一大ブロジェクトになります。正解の型というものは、企業にとって異なるでしょう。ただし、失敗を重ねながらも前に一歩づつ進んでいくことで必ずゴールにたどり着けるはずです。