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ブランド体系戦略とブランドポートフォリオ戦略を学ぶ

はじめに

商品サービスの拡充はどのようなタイミングで行われるでしょうか?

  • 企業の成長
  • 商品のライフサイクル
  • また事業拡大発展時

 

おそらくこのようなタイミングで、商品サービスの拡充という選択が行われるでしょう。高度成長期であれば、市場の拡大成長とともに事業を伸ばすことも可能だったかもしれません。

 

しかし、市場が多様化して消費者のニーズも千差万別となってしまった昨今においては、企業はフットワーク軽く事業の展開を進めなければなりません。単一商品だけでは、企業はリスク回避ができなくなってしまう時代に突入しました。

 

あなた自身もそうかもしれませんが、多くの消費者はとても移り気です。そして、外部環境の変化やコロナウィルスなど未曾有の出来事が企業経営を逼迫させます。そのような環境の中、企業は適切にブランドをマネジメントしながら、管理することが求められます。

 

そこで必要とされることが、ブランド体系戦略ブランドポートフォリオ戦略です。ブランド体系戦略とブランドポートフォリオ戦略を正しく理解することで、ブランドの取り扱いだけではなく、それぞれの相乗効果を高めることができるようになります。この記事では、ブランド体系戦略とブランドポートフォリオ戦略について解説を進めていきたいと思います。

ブランド体系の目的

もしあなたが、複数のブランドを所有しているとするならば、ブランド体系というものを明確にしておく必要があります。それは、各ブランドがどのような立場と役割があるかということを明確にして、それぞれの関係性を構造化するということです。

 

複数のブランドを持つ企業では、状況によってはそれぞれのブランド同士がカニバリを起こしてしまう可能性も無きにしもあらずです。ブランド体系の狙いは、それらのブランド間においてシナジーを生み出すことを前提に構成されています。そのため、適切にブランドの取り扱いができる体系となれば、それぞれが協力に作用しあい、ブランドのアイデンティティを強化することが可能となります。

 

市場とは、まるで変化し続ける生き物のようなものです。その変化する市場において、どのブランドに限られた資源を投入し、育てていくかは常日頃からのマネジメントが影響してきます。ブランド体系とは、そのようなブランド間または市場との関係性を考慮しながら、ブランドを最適化させていくための元となる構成であるといえます。

 

そのステップは、以下になります。

  1. 現行のブランドを体系化する
  2. 体系化したブランドの戦略策定
  3. ブランド体系のマネジメント

現行のブランドを体系化する

まずは、現行のブランドを体系化していきたいと思います。ここでお伝えしたいことは、ブランド体系には「グループ企業ブランド」「企業ブランド」「事業ブランド」「商品ブランド」というものがあるということです。

 

グループ企業ブランドとは、企業群を取りまとめてグループ化、コングロマリット化、ホールディング化したような企業群全体を表すブランドです。昨今では特に企業のM&Aが進み、どのようにグループ企業ブランドにするかを考えなければならない方も多いはずです。当社のクライアント企業も、M&Aを行う前にその点の準備が出来ていなかったために、ブランドとしてのシナジーが生み出せないという経験をしたことがあります。

 

グループブランドを冠として導入するかどうか、または独自の路線を維持するかは、企業それぞれの意思決定によります。どれが正解ということはありませんが、どちらの選択がブランドの価値を高めるかということにおいては熟慮が必要となります。

ブランド体系をEXILEで考える

皆さんはEXILEという音楽チームをご存知のことと思います。ブランド体系として位置づけていくと、まずEXILEが所属している会社であるLDHがコーポレート(企業)ブランドになります。そして、EXILE、EXILE THE SECOND、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEなどがカテゴリーブランドとなります。

 

さらに構成メンバーのHIRO、USA、ATUSHI、TAKAHIROが商品ブランドと位置づけられます。ファンではない一般の人々からすると、LDHというコーポレートブランドはあまり知られていないと予測できます。また、EXILEは聞いたことがあっても、その他のグループや女性グループを知らないこともあるでしょう。

 

最近は音楽活動以外にも活動の幅が広がっているメンバー。一人ひとりを見ると個で活躍する人はその一部ということもあるため、認知度の高いカテゴリーブランドでの活躍を強化しつつ、個々の露出を増やし、結果ファンを増やせるかがこれから気になる動向です。つまり、あくまで主観ですが、企業ブランド、商品ブランドよりも、カテゴリーブランドが強いというポートフォリオマネジメントが見てうかがえます。

グループブランドについて

グループブランドとは、グループ企業全体をまとめたブランドのことです。例えば、ANAグループ、LVMHグループ、セブン&アイグループなどが挙げられます。昨今では市場が拡大する一方で、成熟化が進みシェアを奪い合う市場の構造が存在します。

 

そこで、企業は経営戦略の1つとしてM&Aに積極的に取り組んでいます。そのような際に自社ブランドの傘下に他ブランドを加えるということにおいて、様々な選択が迫られます。そこでコーポレートブランドのひとつ上のレベルにグループブランドを位置づけることによって、体系的にブランドの整理が可能となります。

コーポレート(企業)ブランドについて

コーポレート(企業)ブランドとは、企業全体を象徴するブランドのことです。企業ブランドの事例を挙げると、LVMHグループであれば、Louis Vuitton、LOEWE、CELINE、KENZO、EMILIO PUCCI、Christian Diorなどが該当します。また、セブン&アイグループであれば、セブンイレブン、イトーヨーカドー、セブン・ミールサービス、そごう・西武、ロフト、バーニーズジャパンなど多数挙げられます。

 

一般的な事例であれば、企業名とコーポレートブランドは一致することが多いですが、これらを一致させないケースも存在します。例えば、日本電信電話はNTT、日本電気はNECなどがそうです。このように、企業名を認知させやすくするためには、簡略化したほうがいいという選択も有りえるわけです。

事業ブランドについて

事業ブランドとは、事業内容を明確にするためのブランドです。トヨタを例に上げるとわかりやすいです。例えば、トヨタにおいては、クラウンのような高級車を展開しているものの、トヨタブランドとして展開しています。一方で、レクサスは高級車ブランドとして販売されています。同じ企業内においても複数の事業によってブランドを分けているわけです。

 

同様に、事業ブランドとしては、良品計画のMUJI、レインズインターナショナルの牛角、ファーストリテイリングのユニクロなどが挙げられます。会社名と事業を分けているメリットとしては、複数のブランドを別々のコンセプトで展開できるということではないでしょうか。一方で、適切にマネジメントできずに、複数にブランドが散らかってしまうとマネジメントにコストが掛かってしまうということも考えられます。

商品ブランドについて

商品ブランドとは、商品そのものを明確にするためのブランドです。ユニクロという事業ブランドにおいて、ヒートテックやエアリズムなどのブランドは、ユニクロの商品の顔と言えます。このことは、どのような企業においても商品をブランドにしていきたいと考えていることと思います。

 

ここまでグループブランド、コーポレートブランド、事業ブランド、商品ブランドについてお伝えしてきましたが、特に事業ブランド商品ブランドについては、企業側でどちらのカテゴリーに入れるかを考えていくべきだと思います。

 

例えば、ユニリーバジャパンのLUXという商品は、消費者にとっては、シャンプーの印象を持っているかもしれませんが、LUXシリーズでボディソープやヘアスタイリングの商品など多数あります。そして、それらの商品郡の中においてもいくつもの商品のラインナップがあります。消費者からみればLUXという商品ブランドのように見えるかもしれませんが、実はもう一つ上のカテゴリーの事業ブランドになっていると考えられます。

 

どのカテゴリーに入れるかは、ユニリーバ側で決めていくものです。LUXというブランドが育ったことも有り、事業ブランドに格上げしたという想像ができます。最終的には企業が定義していきますので、同じような状況の場合には参考にされるといいと思います。

ブランド体系に必要とされる考え方

ブランド体系とは、複数のブランドの立ち位置や関係性などを明確に構造化することで、ブランド同士のカニバリを防ぐとともに、ブランド同士のシナジーを生み出すことをゴールとしています。そこで必要となる考え方をお伝えします。ブランド体系の縦のレイヤーは、グループブランド、コーポレートブランド、事業ブランド、商品ブランドです。ここで大切なことは、ブランドの世界観や思想の一貫性が求められます。

 

ブランドアイデンティティとは、その一貫性をもったブランドを作っていくための大切な考え方です。もしあなたが強いブランドアイデンティティを構築することができれば、あなたのブランドにはファンとなる人々が増えていくことでしょう。それは、「良し悪し」で判断していた顧客が、「好き嫌い」の判断となり、ブランドの考え方や行動に対してロイヤリティを持つようになります。

 

ブランド体系の背景には、そのブランドアイデンティティという「らしさ」が存在し、ブランド同士の関係性を強固なものにしていくのです。そして、あなたのブランド群は、目的を持って棲み分けを行い、事業ブランドと商品ブランド、そして各ブランド同士が良好な関係を保てているでしょうか。

 

ブランド体系には上下の関係性と左右の関係性があり、それらを整理することよって機能や役割別に明確にしなければなりません。その際に最も大事なことは、顧客の立場であるかどうかです。例えば、1台数千万円もするランボルギーニがコンパクトカーを販売するとします。ランボルギーニといえば、パワフルでハイグレードなブランドという印象がありますが、スピードと高級感を求めているユーザーのニーズを満たしています。

 

そのランボルギーニがもし軽自動車を販売するとしたら、どのようなことが起きるでしょうか?ランボルギーニファンではなくてもそのブランドの高級感は理解していても、軽自動車がその市場に投入されてしまうと、人々の頭の中に「バグ」が生まれてしまいます。

 

つまり、高級なブランドにリーズナブルなブランドというブランド連想が混在してしまうのです。ランボルギーニであれば、おそらく世の中にないような軽自動車を開発するでしょうが(もともと参入してくるはずは有りませんが)、その戦略がうまくいかなかった場合は、本家のパワフルな高級路線のブランドも傷ついてしまいます。

 

もしランボルギーニが軽自動車に参入するのであれば、少なくとも全く異なるブランドでなければならないということがご理解いただけると思います。このようにブランド体系では、人々のニーズによってブランドを棲み分けすることを考えなければなりません。

体系化したブランドの戦略策定

長々となりましたが、ここまでは「現行のブランドを体系化する」についてお話しました。ブランド体系が理解できたとしたら、これらを活用してブランド体系を戦略に落とし込むことが求められます。

 

ブランド体系戦略は、以下の3つに分けて考えることが出来ます。

  • マスターブランド戦略(ブランドアンブレラ戦略)
  • マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)
  • サブブランド戦略(複合ブランド戦略)

マスターブランド戦略(ブランドアンブレラ戦略)とは

マスターブランド戦略とは、企業の商品・サービスを中心となるブランドで統一する戦略です。中心ブランドから商品サービスを拡張する戦略であることから、ブランドアンブレラ戦略と呼ばれます。

 

一風堂が良い事例となります。一風堂は、その配下にIPPUDO、IPPUDO RAMEN EXPRESS、TOKYO 豚骨 BASE made by IPPUDO、1/2PPUDOなど一風堂を冠するブランドがたくさんあります。厳密には、もっと多くのブランドが有り、ハイブリッド的な体系となっていますが、事例としてはわかりやすいのではないかと思います。ここで大事なことは、一風堂は力の源ホールディングスが運営をしています。

 

つまり、企業ブランド=マスターブランド戦略ということではないということをご理解いただきたいと思います。2つが同じであるという誤解もあるかもしれませんが、これらは別レイヤーの話になるものです。「企業ブランド・事業ブランド・商品ブランド」軸と「マスターブランド・個別ブランド・サブブランド」軸の違いはきちんとご理解ください。

 

「企業ブランド・事業ブランド・商品ブランド」軸は、ブランド体系を表現するものであり、「マスターブランド・個別ブランド・サブブランド」軸は、ブランド戦略に用いられるものです。

マスターブランド戦略(ブランドアンブレラ戦略)における「マスターブランド+型・番号」

例えば、「マスターブランド+型・番号」の事例であれば、メルセデス・ベンツAクラスとか、メルセデス・ベンツSクラスというものがこれに当たります。この場合のメリットは、ブランディングにおける投資をマスターブランドに集中させることができることです。どうしても予算が限られている場合などには、この戦略が適しているといえます。

 

逆にデメリットと言えば、ブランドが既存するリスクの回避が出来ないことです。何かの不祥事があって、そのイメージがブランドを傷つけてしまうとその印象が人々の間に残ってしまいます。また、商品同士の違いが分かりにくくなってしまって、そのブランドに対する初心者は敷居が高く感じたり、判断に迷ってしまうことがあるでしょう。

マスターブランド戦略(ブランドアンブレラ戦略)における「マスターブランド+名称」

マスターブランド戦略(ブランドアンブレラ戦略)における事例は、先程の一風堂で考えてみたいと思います。一風堂は、一風堂赤丸、一風堂白丸、一風堂ホットもやしソース、一風堂秘伝のとんこつダシなどが挙げられます。

 

マスターブランド戦略(ブランドアンブレラ戦略)における「マスターブランド+名称」では、すでに強いブランド連想を武器にできるブランドのリーダーが優位性を持ちます。つまり、他の一風堂以外のラーメン店が同様のことに取り組んだとしても、真新しさが足りなかったりインパクトが薄れたりすることは容易に想像できます。

マスターブランド戦略(ブランド・アンブレラ戦略)のメリットとデメリット

マスターブランド戦略(ブランド・アンブレラ戦略)は、強いブランドを起点としてさらなるブランド拡張を行っていく戦略です。そのため、ブランド強化に必要な資源を集中して運用できるというメリットがあり、高い費用対効果が期待できます。そして、マスターブランドに集中することができることで、経営判断の意思決定において大きなブレが生じにくいという、高い経験則に裏付けされたブランディングができ、組織的なメリットもあります。

 

一方のデメリットと言えば、先程のブランドが毀損したケースが挙げられますが、特定のブランド連想をさせるために、そのブランド連想以外から大幅に外れた事業拡大が困難になることがあります。「軽自動車のベンツ」や「高級宝石のユニクロ」などは、違和感を覚えてしまいます。そして、全く違うチャネルやノウハウの攻略にブランドオーナーも苦戦することでしょう。

 

マスターブランドで事業を拡大していきたいと考えているのであれば、どのブランドがマスターとしてふさわしいのか、そして、顧客のニーズや市場がどれだけのものがあるかという前提に判断をしなければならないでしょう。

マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)とは

マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)とは、独立したそれぞれのブランドを構築していく戦略のことです。マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)もパターンやメリット/デメリットが存在しますので、それらを共有していき、皆さんのブランド体系構築の一助になることを願っています。マルチブランド戦略の型について触れていきたいと思います。

 

例えば、ボディソープのDOVEや紅茶のリプトンというブランドは皆さんご存知だと思います。では、ほとんどの方がご存じないと思いますが、ロレアルやラルフローレンがどの会社のブランド化ご存知でしょうか?答えは、キットカットでおなじみのネスレです。このように個別のブランドは聞いたことがあっても、どの会社のブランドかを理解していない方が多いのです。

マルチブランド戦略における個別にブランドを構築する

マルチブランド戦略を導入するためには条件があります。それは資金ブランド連想です。マルチブランド戦略は、ブランドが複数または多数に及ぶため、それらのブランドを成長させていくためには、それぞれのマーケットで勝つための投資が必要になってきます。

 

そして、例えばヘルスケアと飲食などのように別々のカテゴリーでブランド展開する場合、お互いにその影響を受けてしまうということです。ヘルスケアのブランドは、当然体にいいレストランを提供しているだろう、と。

 

昨今では、M&Aなども進んでおり、思い通りのブランド体系による連想を顧客に抱かせることができるかどうかは確約できません。もし飲食店でもファーストフードのブランドを運営していて、ヘルスケアの製薬業などのブランドを展開しているとするならば、何か科学的な味な飲食店になっているのではないだろうかなどと勘ぐられることになれば、全ブランドにマイナス印象となってしまいます。

 

このような場合は、マスターブランドを強化するのではなく、マルチブランドを個別にブランドの強化を図っていくことで、ブランド連想の足の引っ張り合いリスクは減っていきます。

 

またマルチブランド戦略におけるブランド展開は、軸であるブランド名を生かすという方法があります。すでに存在する強いブランドを冠として、商品のラインを広げることで、投資額を抑えて商品ラインを広げていくことが出来ます。それは、つまり顧客の立場からすれば、よく知っているブランドということで覚えてもらいやすく、また関心を持ってもらいやすいといえます。

 

例えば、コカ・コーラでいえば、コカ・コーラゼロ、コカ・コーラプラス、コカ・コーラエナジー、コカ・コーラストロベリーなどコカ・コーラの名のついたブランドが傘下として多く存在します。これは、コカ・コーラというブランドの力によって派生した商品ブランドを強くしようとしている意図がうかがえます。

 

しかし、メリットでもありデメリットにもなりますが、親ブランドと派生したブランドまたは派生したブランド同士に影響を与えやすい状況となってしまいます。例えばコカ・コーラゼロに異物混入などがニュースになると、コカ・コーラ全体の商品の売上に影響を与えることは間違い有りません。

マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)のメリットとデメリット

マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)は、その名の通り個別のブランド戦略となるため、投資先が複数に渡ってしまいます。ただ、顧客のニーズに合わせたブランドの展開ができることは企業にとっては市場の創造に繋がると期待できるはずです。

 

ユニリーバ、P&G、エステー、小林製薬などなどが代表的と言えますが、個々が強いブランドを構築し業界においてポジショニングを確立することができれば、企業にとっては偏った商品への依存体質を免れることが出来ます。

 

ところがマルチブランド戦略にもデメリットは存在します。マルチブランド戦略は、ブランドごとに顧客が異なることもあり、マーケティング戦略において様々な意思決定を伴います。そしてブランド同士のカニバリゼーションが起こってしまう可能性もあり、高いブランドマネジメント力を要することになります。

 

またブランドが増えてくることにより、非効率性を伴ってしまうため、規模の拡大とシナジーに制限が生まれてしまいます。その結果、収益規模もどんぐりの背比べのような状態になることもあり、小さなブランドばかりが存在してしまうというリスクも隠れています。

サブブランド戦略(複合ブランド戦略)とは

サブブランド戦略(複合ブランド戦略)とは、マスターブランドに対して個別のブランドを「サブ」として展開していく戦略です。強いマスターブランドにより、個別ブランドをサポートする戦略と言えます。このことから、マスターブランドと個別ブランドの2つを組み合わせるため複合ブランドという方が伝わりやすい人もいます。

サブブランド戦略(複合ブランド戦略)のメリット・デメリットと事例

サブブランド戦略を採用している会社を挙げると、例えば任天堂やサントリーがそれにあたります。任天堂はNinetndo Wii、Ninendo 3DS、Nintendo 64、Nintendo Cubeなど任天堂を冠としてマスターブランドを展開しながら、Wii、3DS、64、Cubeなどを展開してきました。そして、サントリー烏龍茶、サントリー緑茶 伊右衛門、サントリー天然水、サントリー黒烏龍茶など、サントリーも同様にサントリーをマスターブランドとして冠にしながら、サブブランドをサポートしています。

 

サブブランド戦略を採用するメリットは、すでにマスターブランドとなっている冠ブランドが強い知名度やブランド連想を確立しているため、個別ブランド戦略のようにゼロから立ち上げるリスクを大幅に軽減でき、なおかつ投資効率も高くできる可能性があります。さらにサントリー緑茶伊右衛門のように、サブブランドとしての知名度が高まりファンが根強くなると、次のステップとしてはマスターブランドに育てていくことができるのです。

 

伊右衛門は、サントリーがマスターブランドと言えますが、現在では伊右衛門ジャスミン、伊右衛門ほうじ茶、伊右衛門炙り茶葉仕立てなどのように、伊右衛門そのものがマスターブランドとして成長しています。この戦略は伊右衛門だけではなく、BOSS、グリーンダ・カ・ラ、なっちゃんなどにも展開されています。

 

このようにサントリーは、マスターブランドを全面に出しながらサブブランドを育成し、そしてサブブランドをマスターブランドへ育てて、さらにその下にサブブランドを展開してく手法を取っています。サントリーは最初のステージでは、リスクを回避しながら投資効果の高いブランド展開を行い、次第にマルチブランド戦略(個別ブランド戦略)へ移り、顧客のニーズを満たすブランドの展開を行っており、サブブランド戦略のメリットを享受しています。

 

いかがでしょうか。これは前提条件として、サントリーのように強いマスターブランドが必要になるため、マルチブランド戦略に比べると時間がかかってしまいます。大事なことはあなたのブランドを拡張するにあたり、どの戦略があなたに適しているかを見極めることであるといえます。

ブランド体系を管理する:ブランドポートフォリオ戦略

ここではブランドポートフォリオ戦略についてお話をしていきます。ブランドポートフォリオ戦略とは、あなたが選択したブランド体系戦略において、ブランド間でのカニバリを避け、本来目指すべきシナジーを生み出すことができるようにブランドのマネジメントを行っていきます。

 

ブランドポートフォリオ戦略では、これらの事に注意を払う必要があります。

  • ブランド間でのカニバリを避けること
  • ブランドの親子関係における、ブランドアイデンティティのズレの是正
  • ブランドを複数保有することによるリスク回避
  • ブランドを複数保有することによるシナジーの強化

ブランドポートフォリオマネジメントについて

ブランドポートフォリオのマネジメントは誰が行うのでしょうか?その責任者は?マルチブランド戦略(個別ブランド戦略)により事業展開を行っている場合、それぞれのブランドの棲み分けが行えていなければ、確実と言っていいほど共食い状態/カニバリになります。

 

そうなってしまえば、せっかく育てたブランドも残念ながら持続できなくなるでしょう。ブランドの責任者は、このような状況を作る前に、事前にカニバリによるリスクを最小限に食いとどめたいものです。

 

そして、カニバリを最小限にとどめながらも、ブランド同士のシナジーの最大化を目指さなければならないという、とても重大な責務を伴います。全体としてのブランド価値の最大化と、将来的なリスクの最小化を同時に行わなければならないというのは、高度なマネジメントスキルが求められます。つまり、この規模のブランドマネジメントを行うためには、トップレベルのマネジメントスキルを持ち合わせた集団でなければならないということです。

 

プロダクトポートフォリオマネジメント(ボストンマトリックス)のようなフレームワークを用いて、ブランドのポジショニングを明らかにしていくこと、つまり、「自社に優位性のあるブランド」「収益力の高いブランド」「資源を集中させるブランド」「捨てるブランド」などと整理をしていくことも一つのポジショニング方法です。

 

最後になりますが、ブランド体系をまとめ、戦略を強く推し進めていくためには、ブランドを育てていくための組織づくりも事前に行っておかなければならないといえます。

ブランドポートフォリオとは:ブランド体系戦略とブランドポートフォリオ戦略まとめ

いかがだったでしょうか。ブランド体系をまとめ、どのタイプのブランド拡張があなたのブランドに適しているか、少しでも参考になったのであればありがたく思います。

 

複数のブランドを持つことは、ある程度事業規模の大きな会社のみかといえばそうでは有りません。当社においても、オムニモスークというコーポレートブランドから始まり、ブランド戦略実践会、BIFAなどの事業ブランドが存在します。

 

ブランド開発と育成においては、ブランド戦略実践会とBIFAは重なることがあるかも知れません。しかし、ターゲットを変えたり、金額を変えたり、コンテンツを変えたりすることで、既存の顧客とそうでない見込み客の両方に対してブランディングしています。

 

つまり、こんな2つの事業においてさえ、シナジーを生み出しながらもカニバリしかけているということを実感しています。もしあながた複数のブランドを抱える会社のマネージャーや関係者であれば、つねに最上の解を求めながらも、カニバリのリスクを最小にするための戦略を構築していっていただきたいと思います。